解熱鎮痛薬「ロキソニン」や総合かぜ薬「ルル」、胃腸薬「ガスター10」などを手掛ける第一三共ヘルスケアが、ふとした疑問にメディカル視点で答え、製品開発にかける想いを語る動画シリーズ「Medi
Theater」。
第三回のテーマは、炎症を抑える作用を持つ成分「トラネキサム酸」です。
さまざまな医薬品や薬用化粧品に使われる「トラネキサム酸」とは?
トラネキサム酸は第一三共の前身のひとつである第一製薬が開発した成分で、出血を止めたり炎症を抑えたり、湿疹やじんましんを抑える作用があります。1965年に医師により処方される医療用医薬品として発売され、その後OTC医薬品としてかぜ薬などにも応用。さらに肌への作用も期待され、薬用化粧品にも活用されてきました。
トラネキサム酸開発に至る歴史は古く、製品化までにはさまざまな道のりがありました。1951年、当時慶應義塾大学医学部講師だった岡本彰祐博士らが抗プラスミン作用のあるイプシロン-アミノカプロン酸という成分を発見、これが第一製薬から発売されたことが抗プラスミン剤の先駆けとなります。
この岡本博士らが発見した抗プラスミン剤は画期的な新薬として注目を集めましたが、研究の結果、その作用を確実に得るためには大量の投与が必要なことも分かってきました。この課題を解決するため、第一製薬は神戸大学医学部の教授となっていた岡本博士の協力を得て研究を重ね、1964年にイプシロン-アミノカプロン酸から合成した化合物、トラネキサム酸が強力な抗プラスミン作用を持つことを発見したのです。そして1965年、トラネキサム酸から生まれた新薬が発売されます。この新薬は手術時の止血や血友病、紫斑病など多様な適応範囲を持っていたことから、高く評価されるようになりました。研究者たちによる長年の研究の成果が、現在さまざまに活用される成分を生み出したのです。
のどの痛みからしみケアまで、幅広い範囲で活用されているトラネキサム酸。しかし、なぜのどの痛みに効く成分が、肌にもよい効果をもたらすのか、考えてみると不思議な気もします。そんな疑問に、2008年の入社以来、トラネキサム酸を使用した製品の開発研究に長く携わる有用性研究担当の辻さんが答えてくれました。
【疑問①のどの痛みとしみの生成にはどんな関連性が?】
辻さん:人の体で出血が起きると、プラスミンというタンパク質が発生します。このプラスミンには血液を固まりにくくするはたらき、そして炎症や痛みにかかわる物質を誘発するはたらきがあります。第一三共(第一製薬)が開発したトラネキサム酸には、このプラスミンを抑えるはたらきがあります。そのため、のどの痛み、口内炎、じんましんなど、身体中のさまざまな炎症を抑えることができるんです。
トラネキサム酸がプラスミンのはたらきを抑える
そのプラスミンは、じつはしみの生成にも関わっています。紫外線などの刺激を受けると、プラスミンは肌のなかにある色素細胞にその情報を伝え、情報を受け取った色素細胞は、しみの元となるメラニンを作り出すのです。トラネキサム酸にはプラスミンを抑制する作用があるため、メラニンの生成が抑えられ、しみの一種である「肝斑」の改善につながるのです。また、トラネキサム酸を肌の表面から塗布すると、しみの予防にもつながります。
しみの生成を抑制するメカニズム
第一三共ヘルスケアはこのようなトネキサム酸のはたらきに着目。抗炎症成分としてのどの痛みや口内炎の薬、総合かぜ薬に配合するのに加えて、肝斑改善薬やスキンケア製品など、さまざまな製品に活用してきたのです。それによってトラネキサム酸は、さまざまなシーンで私たちの暮らしをよりよくする成分へと成長していったのですね。
【疑問②トラネキサム酸には保湿効果やシワ・たるみへの効果はありますか?】
さらに、自社での研究を続けてきた結果、トラネキサム酸にはさらなる効果があることがわかってきました。美白・スキンケア製品の開発担当の牧さんは次のように話します。
牧さん:お顔の片側にトラネキサム酸を配合したクリームを、反対側にはトラネキサム酸を含まないクリームを塗布し、12週間後にお肌の水分量の測定を行いました。すると、トラネキサム酸を配合したクリームを塗った部分の水分量が増加したことがわかりました。
さらに、辻さんは「ブルーライトによる肌の光老化」の抑制にもトラネキサム酸は効果があると言います。
辻さん:シャーレに入った皮膚由来の細胞にブルーライトを当てると、ブルーライトに反応して炎症作用が起きます。ところが、このシャーレにあらかじめトラネキサム酸を添加しておくと、ブルーライトを当ててもトラネキサム酸が炎症反応を抑制することがわかりました。
ブルーライトによる炎症反応にもトラネキサム酸がはたらく
さらに研究によって、ブルーライトは肌のコラーゲン量を減少させる一方、トラネキサム酸はコラーゲン量を増加させることがわかりました。
牧さん:水分増加や老化予防のメカニズムについてはまだ解明されていない部分も多く、今後も研究を続けより機能性の高い製品開発につなげていきたいと思います。
このように、肌への効果ひとつとっても、トラネキサム酸には多くの可能性があります。もしかしたら今後、さらに画期的な製品が生まれていくかもしれません。
【疑問③第一三共ヘルスケアでのスキンケア製品の開発・研究の仕事とは?】
ここで、トラネキサム酸の話題から少し離れて、辻さん、牧さんおふたりのお仕事について注目してみましょう。スキンケア製品の開発・研究とはどのような仕事なのでしょうか。
牧さん:開発の仕事とは、製品の企画立案から発売まで、全てのステージにおいて研究担当やマーケティング担当と協力しながら製品開発を行う仕事です。第一三共ヘルスケアが「エビデンス・ベースド」、科学的根拠に基づいて製品開発をしている点が、この会社に入ろうと思ったきっかけであり、今もその考えを大切にものづくりをしています。
辻さん:研究所での仕事は大きく3つあります。薬の中身を作る「製剤担当」、有効成分を分析し品質を評価する「分析担当」、私たちのような、安全性や有効性を研究する「生物担当」です。第一三共オリジナル成分は、医療用の医薬品から始まって市販薬(OTC医薬品)、その先にはスキンケアやオーラルケアという形で医薬部外品としても使えるようになるという広がりを持っている成分で、それは第一三共グループならではです。それを新しい製品に還元できたらなと思って研究を進めています。
【疑問④第一三共ヘルスケアで働いている人の性格は?】
さまざまな製品を日々開発し、人々のすこやかな生活に寄与している第一三共ヘルスケア。そこで働く人たちは、どんな思いをもって仕事に取り組んでいるのでしょうか。
辻さん:すごくみなさん誠実。お客様に喜んでもらいたいという気持ちがみんな一緒だなと思っています。誠実な方々と一緒にお仕事できるというのは、第一三共ヘルスケアらしいやりがいかなと思います。
牧さん:開発職に就く前には研究にも携わっていたのですが、そのバックグラウンドを活かして、どうやっていいものづくりができるか?ということを一緒に考えられるといいかなと思っています。
辻さん:当社のスローガンが「お客様に寄り添う」というキーワードになっているのですが、まだまだ研究者としてお客様のためにできる研究があるんじゃないかなと思っていて。まずはそれを一つずつでも進めていって、お客様に喜んでいただけるような製品作りに貢献できたらなと思っています。
「Fit for
You 健やかなライフスタイルをつくるパートナーへ」というコーポレートスローガンを掲げている第一三共ヘルスケア。大切な瞬間を、誰もが自分らしく、すこやかに過ごせるように開発・研究を続ける彼らの今後にも注目です。